最先端科学技術少女クラブ(仮) 第1話その3
<前回からの続き>
その時である!
「そこまでだ!最先端科学技術部!」
ガララッと教室の扉を開けて入ってきたのは、
「俺は埋蔵金発掘に命をかける冒険者Aだ!一発使い捨てキャラだから名前がないのだ!だけどそれはちょっと空しいから、自分で勝手に『ヒロシ』と名乗っている冒険者Aだ!」
典型的な冒険者の格好をした男である。そのほかの描写は、どうせ使い捨てなので、読者のご想像にお任せする。
冒険者Aは奏に向って低い声で、
「さあ、おとなしく埋蔵金を渡してもらおうか……」
しかし、奏も負けていない。鋭い目つき、鋭い言葉で言い返す。
「そうはいかないわ……欲しければ、そう、力で奪い取ることね」
それを聞いた月美。
「奏、奏、ものすっごい悪役言葉なんやけど。つーか、なんで埋蔵金が発見された感じになってんの?」
というわけでバトルスタートだ!今回は記念すべき第1回ということで、RPG風に解説してみるぞ!
敵が現れた!(荒嵐 奏×1、嬉怒 月美×1)
「え!?こっち側が敵なん!?」(月美)
奏の攻撃!奏は白衣から武器を取り出した!
「あたしの発明品『マンイーター・ガス噴出機』!発射!!」
「ノワァーーーーーっ!!」
冒険者Aは769のダメージ!冒険者Aは戦闘不能になった!プレーヤーは全滅した……
「どう?名無しの冒険者ごときがあたしの実力を甘く見ないことね!」
「はやっ!?第1話くらいもうちょっと盛り上げようや!!つーか、ちょ!?何このガス!?ピンク色ですっごいやばそうなんやけど!?」
「安心して、月美さん。この『マンイーター・ガス』は、最先端科学技術を駆使した完璧な研究により、男性にしか存在しないY染色体の機能を低下させる謎のガスだから、女の子には大丈夫よ!」
「最先端科学技術を駆使した完璧な研究をしたのに『謎』のガスやと!?」
「飛行機だって、実際どーいう物理作用で飛んでるのか証明されてないんだし、そんなもんよ。さぁて、さっそく埋蔵金を掘り出すわよ!」
そういって、白衣から『教室の床板外し機』を取り出す奏。
「なんでそんなマイナーなもん作ってんねん……つーかあらかじめ教室になんかあるってわかってたんか?確信犯なんか?」
「さぁて、どんな埋蔵金が出てくるかな♪」
「てゆうか、その白衣、なんでそんなに物入ってんの?」
鼻歌交じりに、『教室の床板外し機』というバールにしか見えない物で教室の床板を外していく奏。
そしてついに!神秘の埋蔵金の正体が明らかになる!
「あったわよ、月美さん、ほら!10円玉!」
「……こんなことのために儚く散っていったのか、冒険者Aは……」
未だ倒れたままの冒険者Aを哀れに見つめる月美。
それに対し、心外とばかりに声を荒げる奏。
「何言ってるの!?この10円玉はただの10円玉じゃないのよ!」
「どのへんが?」
「昭和64年製造!かつギザ10!!」
※ご存じ!?脚注さん:昭和天皇が崩御したのが昭和64年(=平成元年)1月7日だったので、昭和64年と銘打たれた硬貨が存在するのデス。
※ご存じ!?脚注さん:ギザ10とは昭和26年から33年に作られた10円玉は、縁がギザギザなことから付けられたものラシイですヨ。
「ちょう待ちや!おかしいやないか!?昭和64年にギザ10が作られるわけないやろ!?」
「ふふふ……だから価値があるんじゃないの」
「いや、むしろソレ、なんか偽造とかそんな感じのもんやろ!?」
「いや!押し通すわ!なんとしても部費のために!」
「部費のためやったんかい!?ちゅーか部活じゃないから部費ではない気が!」
奏と月美の言い争いが続く中、ふいに倒れていた冒険者Aから声が上がる。
「くそぅ……幻の『昭和64年のギザ10』に目がくらんで不覚を取るとは……無念……」
「不覚というか、どー考えてもボロ負けじゃん」(奏)
「だがしかし……!これで終わりだと思うなよ……昭和64年のフデ5は未だわが手の中に……」
※ご存じ!?脚注さん:5円玉は本来の「日本国(ゴシック体)」と書かれているが、昭和26年から33年に作られた5円玉には「日本國(楷書体)」で書かれており、フデ5と呼ばれているんデスよ。
「だからそれもニセモノやって……」(月美)
「そして、いずれ第2、第3の刺客が……ハローワークを卒業して……」
「就職難がこんなところまで……」
「……難儀やヤツラやな、奏も含めて」
数々の疑問を残したまま、冒険者Aはほふく前進でゆっくりと教室から這いずり出ていく。
「……奏、ほっといてえぇの?」
「意味深な捨て台詞、次なる敵の予言、そしていやがおうにも興味をそそられる伏線……名無しの割にいい仕事をしたわね、冒険者Aこと『サトシ』」
「いや、アンタの言葉、ほぼ全部において間違いがあるし」
二人がたたずむ教室、そこには埋蔵金を発見した達成感と、新たな襲撃の予感と、そして遠くで聞こえる『不審者がいたぞー!』『捕まえろ!』『俺は埋蔵金発掘に命をかける冒険者Aだ!一発使い捨てノワァーーーッ!』とかの残響が残されていた……
そして翌日。
「ごきげんよう、月美。今日もいい天気ね!」
「……あんた、ごきげんようとか言うキャラやったんか?」
先に登校していた月美に、ホームルーム1分前に登校してきた奏が声をかける。説明が遅れたが、奏と月美は同じ1年3組だ。
ホームルーム1分前だが、教室内では先生やら生徒やらがバタバタと動き回っている。
そんな周りの様子を奏は一瞥して、首をかしげ、
「……なんかバタバタしてるけど……あと、男子が全くいないような気がするんだけど?」
「それがやねんけどな、みんな教室入ってきたとたん、急に男子だけパッタリ倒れちゃって……」
「(へー、それは不思議ねぇ……)昨日使った『マンイーター・ガス』は残存率が非常に高くて3日くらいは残っちゃうんだけど、これは秘密にしておこう……」
「()にする部分が間違っとるよ?」
「ノワァーーーッ!!」
「さ、警察行こうか、警察」
「ちょっと待ってよ!あたしはただ暴漢を退治しただけだし!」
「うん、そやね。だからその辺のこと、ちゃんと説明すれば警察の人もわかってくれるって」
「わかってくれないって!素人に私の最先端科学技術の仕組みは理解できないって!こないだので警察にはすごい懲りたから!」
「こないだ、て、全然懲りとらんやろ!」
喧々囂々の末、月美自身、警察にどう説明したらいいのかよくわからなくなって何かめんどくさくなったので、取りやめに。
ちなみに、男子全員体調不良の原因はどう片づけられたかというと……
調査の結果、昨日、クラスの男子全員が結託し、某裏山に不法投棄されたエロ同人誌を拾いに行っていたことが判明。それにかこつけて、病気の原因としては、そこの裏山で何か妙なウィルスだか細菌だかを拾ってしまい体調を崩したんだろう、という結論でまあいいかということになった。
その結果、1年3組の男子は『エロ同人ウィルスマンズ○号(←出席番号)』と呼ばれながら、これからの高校生活を送ることになったという……
今回の反省会(奏、月美)
「エロ同人は拾うんじゃなく、ちゃんと買いましょう。せこいことをすると上記のようになってしまいますよ」(奏)
「自身に対する反省の色はなしか」(月美)
「そーいう月美さん」
「なんや?」
「月美さんの得意技であるとされている機械類の修理が第1話なのに出る気配もなく……」
「ノワァーーーッ!!」
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